第四日目 ('94. 5. 1)
能登川から米原(滋賀県)へ


6時55分に我家を出発 JR大阪駅発8時00分の新快速電車に乗り、9時08分JR能登川駅に到着   ―――― 今日の旅は能登川から始まります ――――


メガネ・・・落とした!の巻

9時15分 出発
五月晴れを期待したが生憎の曇り空・・・でも、おじさん二人は今日も元気!
彦根へは国道を行けば良いのだが3日間も殺風景な道を歩いたので、今日は少し
遠回りになるが風光明媚な琵琶湖岸を歩く事にした。

のどかな田園の中を、一路、湖へ・・・
そして1時間半ほど掛かって愛知川の河口から湖岸へと出た
期待に反して、空はドン曇りで広々とした湖も空と同じ色・・・おまけにガスがかかって
何も見えない。暫らくは延々と続く湖岸を彦根に向かって歩き続けた・・・



12時を少し回ったところで雲が更に低くなってきた。
「降ってくる前にメシにするか!」と、雨に備えて松林の中でランチタイムにする。

今日は二人とも手作り弁当持参だ! いわゆる愛妻弁当というヤツである。
湖畔コースはピクニック気分なのでNさんも私もそれぞれ女房に頼んで作って貰ったと云う訳だ。

冷凍してきた缶ビールが程よい冷たさになり、渇いた喉の奥へゴクリと流れ落ちる。
「あぁ~美味い!」
ギュっと握った<おむすび>も<鳥の唐揚げ>も<ウインナ―>も<卵焼き>も
<サラダ>も素朴な味だが、大自然の中では最高のグルメだ!

ポツリ、ポツリと雨が降り出したのは我々の昼食が終って間もなくの事だった。
「降ってきたなぁ~、さぁ、出発だ!」と急いでカッパを着て再び彦根を目指した。

松林を出たところで登山用の大きなザックを背負った二人の若者とすれ違った。
「オッス!野宿の旅か?」と私は彼らに声をかけてみた。
見知らぬおっさんの言葉に彼らは一瞬戸惑った様子だったが、我々が東京までの
途上だと話したら急に話が弾んだ。
彼らは今日は50kmほど歩き、草津付近で野営してゴールデンウイーク中に琵琶湖
を一周して名古屋へ帰るとの事だった。
「テント泊の旅か・・・面白そうだなぁ!」
いつの間にか若者の話に私は引き込まれていた。
屈託のない若者ともっと語り合いたかったが、お互い夕暮れまでに目的地に着かね
ばならない身なので盛上がった話を中断して北と南に別れた。

雨は止む気配もなく、荒神山あたりからは本降りとなった。
だが、あの初日の暴風雨からすればこんな雨は大した事では無かった。

雨中を歩く事2時間、彦根に到着する頃にやっと雨は上がった。
国宝の彦根城近くにある<夢京橋キャッスルロード>と名付けられた江戸時代の
町並み(写真)を抜け、ひと先ず彦根駅へと向かった。



「米原まで国道を歩くのは気が向かんなぁ・・・」
駅前で思案したが、石田三成ゆかりの佐和山城祉の麓の道を行く事に二人の意見が一致した。

情緒タップリの田舎道に満足しながらのんびりと歩いている内に、道はやがて細くなり
<東山ハイキングコース>の看板が立てられた所から山に向かい始めた。
すでに午後4時を過ぎていたので全く不案内な山道を歩く訳にはいかない。
「やっぱり、国道を行けば良かった・・・」と思った時は後の祭り、さて、どうするか?
彦根駅まで戻るしかないか!!

「線路を横切って向こう側の道に出よう!」とNさんが云った。
「行くか・・・」と私。
JR東海道線のこのあたりは勿論、線路内進入禁止だが背に腹は替えられない。
「レッツゴーだ!」

葦の茂った広い側溝を飛び越え、小石の積まれた土手を這い上がり、左右を充分
確認して・・・(以下の描写は問題有りなので省略)
そして、背丈以上のフェンスを乗り越えて西側の道路へと飛び降りた。

地図が無いので、兎に角、北に向かって歩いている内に、又々、雨が降ってきた。
幸い近くに高架道路が有ったので、その下でカッパ姿になり、再び旅を続けた。

「米原や!」
遥か前方に米原の市街が見えた。
新幹線の列車が速度を落として街の中へと消えていく。

「さぁ、いよいよラストスパートだ!」
と気合を入れた途端、私はメガネの無い事に気が付いた。
何処で落としたのだろう・・・彦根の喫茶店か?
JR線の側溝やフェンスを飛び越えた時か?
それとも雨宿りしてカッパに着替えた時か?

「探しに行こう!」
Nさんは云ってくれたが最悪の場合は彦根の喫茶店まで引き返さねばならない。
「もう、あきらめるワ・・・」
私は自分の不注意の為にNさんに迷惑をかけたくなかったので彼の申し出を断った。
だが、Nさんはそんな私の遠慮を無視するかのように、いま来た道を戻り始めた。
私は申し訳ない気持ちと情けない気持ちが複雑に絡み合ったまま彼の後を追った。

「有った!有った!」
幸運にも、引き返すのに一番近い、雨宿りした高架の下にメガネが落ちていた。
「あぁ~、5万円儲かった!」 一時は本気で諦めたので何だか得した気分になった。

高架下まで引き返すのに約25分、また元へ戻るのに25分の合計50分ほど時間の
ロスが出たが無事、米原駅前に到着した。
時刻は午後5時50分、雨はすでに上がっていた・・・

―― 第4日目 完 ――

Memo
今日の行程(歩数) 46,366歩(距離) 33km
交通費(往路) 近鉄山本駅~JR能登川駅  1,810円(帰路) JR米原駅~近鉄山本駅  2,070円
飲食、その他コーヒー 350円 みやげ 1,200円(合計)  1,550円

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