第十一日目 ('95. 2.11)
豊田から幸田へ(愛知県)

新大阪発 8時13分の新幹線<ひかり>に乗車  ―  9時18分 名古屋駅着
地下鉄   9時33分乗車(伏見駅で名鉄に乗換) ― 10時34分 豊田駅着

今日の見所は徳川家康ゆかりの岡崎城 ・・・ だが、見学の時間が有るかど~か?
冬の日暮れは早い!
ゴールのJR幸田駅(東海道本線)まで約27kmを暗くなるまでに歩かねばならない
あぁ、今日もまた、ひたすら歩くのみか???

― 今日の旅は豊田から始まります ―


厚化粧のオバハンは何者?

天気晴朗 気温14度 2月初旬にしては暖かい!
相棒と私は、急きょ、冬装束を薄手のジャンパーに着替えて出発

名鉄・豊田市駅から<挙母町>へと向かい、そこからR248号線で南下する
地方都市特有の退屈な風景の中を歩くこと約50分ほどでトヨタ町に到着した
ここは町名の通り、トヨタ自動車の本社工場のある町だ

早速、休憩を兼ねて工場の前を少しウロウロしてみた
さすがにデカイ! と、云いたいところだが、ここからは工場全体の大きさは判
らない ・・・ 
それに、目の前の正門は巨大工場にしてはこじんまりとして誠に質素だ!
私の想像していた風景と違ったのでチョッと拍子抜けしたが、逆に、虚飾を廃し
たこの<質素な正門>にトヨタ流の揺るぎない精神が込められているように思
えた

休憩は約5分、先を急ぐ旅なのでとりあえず正門前で記念写真を撮り出発した

その前に、ちょっとトヨタ自動車についてお勉強 ・・・
我々がトヨタ工場を訪れてから12年後の2007年度の業績は下記の通りです
売上高は約24兆円、これは超大国ロシアの国家予算に並ぶそうです
それに、来年度は売上高で世界一の米国GMを上回る見通しとの事である ・・・
― 2007年5月10日 朝日新聞・朝刊より ―


さて、旅の続き ・・・
トヨタ町を抜けると国道は田園地帯の中を南へと向かっていた
東へ東へと行かねばならない旅なのに、南へ向かうのは距離や時間が無駄の
ように思えるが、遠回りや寄り道もまたこの旅の楽しみだ! 
日々、効率やルールに縛られている我々には「無駄なこと」こそストレス解消の
特効薬かも知れない???

矢作川(やはぎがわ)を渡る頃、腹の虫がグー、グーと鳴った
まだ2時間も歩いていないがスタートが遅かったので既に12時をまわっている
「腹へったなぁ~、 どこかにメシ屋ないかなぁ~!」
食堂はなかなか見つからなかったが細川町(岡崎市)まで来てやっと国道沿い
に一軒見つけた

メシ屋の名は<実演三峰>
何だか妙な名だが<うどん・そば>の看板があったので、即、飛び込んだ
食事を注文する前に「ここで何ぞ実演するんでっか?」と大阪弁で聞いてみた
地方では大阪弁で喋るのが一番! 不思議と、皆、親近感を持ってくれる

「あれは屋号ですよ」と女将さんらしき人の返事が返ってきた
「な~んや、実演は無しでっか?」 と、私が大いに失望した顔で答えたところ
「なんなら私が実演しよか・・・」
と、女将さんの横にいたチョッと厚化粧の中年女性が変な流し目で口をはさんだ
「Oh,No!No!」
と、私は大袈裟な身振りでこの派手な顔(?)の女性の言葉を拒否したが、大阪
のオバハン並みに強烈なギャグを飛ばす彼女とたちまち意気投合した

(その後の三河オンナと浪速オトコのどぎつい会話はNet上では差し障りがあるので割愛します)

「とりあえず、ビールで乾杯や!」
と、弾む会話を中断して生ジョッキーを頼んだ

「カンパ~い!」
店の客なのか店主の知り合いなのか、さっぱり判らない厚化粧のオバハンも手近
にあったコップの水で乾杯に付き合ってくれた

「あぁ~ウマい!」
いつもの事ながら汗をたっぷりかいた後のビールは誠に美味!
それに、今日は冷え冷えのナマなのでなおさら美味!
ビールを発明した人や、それを冷やす機械を発明した人に感謝感激の一瞬だ!

そして、おあとは本場・<八丁味噌の煮込みウドン>で冷えた胃袋を温めた
大阪ウドンに慣れた我々にはチョッと風変わりな味だが、これもなかなか美味!

ここで、八丁味噌のお勉強 ・・・
岡崎は八丁味噌で知られる赤(豆)味噌発祥の地である
味噌は大豆を発酵させて作る
その時に使う<麹(こうじ)>によって、米味噌、麦味噌、豆味噌にわかれ
豆味噌は大豆と大豆麹が原料なのでそう呼ぶ
江戸の初期、三河に発した赤味噌は尾張、美濃、伊勢に及び、米味噌で
塗り潰された本州のほぼ真ん中にくっきりと独自の文化圏を形成している
そして、ご当地岡崎城の裏手には八丁味噌の老舗が並んでいる
― 2007年5月10日 日本経済新聞(夕刊)より ―

食堂で店主や得体の知れない女性との会話が弾み、ランチタイムに1時間
以上も費やしてしまった
「急ごう!!」
と云って店を出たのが午後1時45分、ここまで、まだ10kmほどしか歩いて
いない、JR幸田駅まであと約16~17Kmありそうだ!
日暮れまでに着くだろうか ・・・ ?

食堂を出て、ひたすら歩くこと約1時間半・・・ 前方に大きな交差点が見えた
「国道1号線や!」 と、思わず私は叫んだ
あぁ、懐かしい1号線! ここはもうあの<東海道>だ!
この旅を始めて2日目、滋賀県の栗東で<中山道>へと向かって以来、9日
ぶりの合流だ!

さっそく、交差点を左折して国道1号線(東海道)を東へ歩いてみた
大型のトラックがガンガン行き交う様子はあの大阪・枚方バイパスと同じだ!
これまで歩いてきた国道とはスケールが違う ・・・
「やっぱり、日本一の大動脈や!!」

だが、この大動脈をほんの少し歩いただけで我々は<岡崎城>へ向かうため
またまた東海道に別れを告げなければならなかった

国道からすぐの<岡崎公園>に着いたのは午後3時半を過ぎた頃だった
「城の見学はチョッと無理やなぁ~!」 と、腕時計を気にしながら相棒が云った
「幸田駅まであと10Km程やから時間的に無理やな!」 私も彼に同意した
徳川家康の生誕地なので是非とも見学したかったのだが、又の機会にしよう!

公園の芝生の上で缶コーヒーを飲み、足や腰の筋肉が冷えない内に出発した
先ほどの国道1号線へは向かわず、朝から歩いてきた国道248号線へと戻り
<幸田>を目指した

今日は、珍しく二人揃って体調はベスト、それに気温も14度と歩くには最適だ!
こんな日は軽く4~50Kmは歩けそうだが(ホンマかいな?)、残念ながら時間
が足りない ・・・

大阪から遠くなるに連れて旅の開始時間が遅くなってしまうのが辛い
今日も午前7時に我家を出たが、スタート地点の<豊田市駅>に着いたのが
10時34分、これでは夕暮れまで7時間ほどしか歩けない
それに、休憩やランチタイムの約1時間を差引くと実動6時間になってしまう
平均時速5Kmで歩いても約30Km地点で日が暮れてしまう勘定だ

と、云うわけで時間に追われる我々は只ひたすら幸田駅を目指し歩き続けた
「この分だと日没までに駅へ着けそうにないなぁ~!」
私はあのメシ屋で長居し過ぎたのを今更ながら悔やんだ

案の定、<馬場の池南>と標識の有るあたりで太陽が沈みかけた(下写真)
駅まであと3~40分はかかるだろう・・・

暫くして、駅方面の標識を見つけたので国道を離れ町の中へと入って行った
すでに日の暮れた小さな町は人影も無く、暗く、寂しい ・・・ 

地図を持たないで旅する我々に闇夜は大敵だが幸いにも道に迷うことも無く
午後6時8分、無事、JR東海道本線の幸田駅に到着した
万歩計は40,265歩を示していた ・・・

いつもならここで旅の終わりの<乾杯タイム>だが、写真の如く小さな駅舎
には缶ビールを売る売店すらない
「あぁ、ビールのみた~い!」 と嘆いている内に<下り>の電車が到着した
「ビールは名古屋駅までオアズケや ・・・!」

                            ― 第11日目 完 ―

今日の行程 (赤線が歩いた道)

その後の行程は下記の通り
幸田駅発:18時26分の下り普通電車に乗り、岡崎駅で快速に乗り換えて名古屋駅へ(19時3分着)
名古屋駅構内の<グルメワン>で約40分のビールタイム
名古屋発:20時7分の新幹線で大阪へ (飲み足らない我々は車内でまたまた缶ビール)
新大阪着:21時16分  帰宅は22時30分 ・・・(あぁ、シンド!) 
今日一日、朝7時から夜10時半までの総歩数 : 48,886歩 (健康のため、歩き過ぎに注意?)

Memo
今日の行程(歩数) 40,265歩(距離) 約27km
交通費往路
近 鉄/山本~鶴橋         220円
新幹線/大阪市内~名古屋   4,210円
地下鉄/名古屋~豊田       770円
帰路
新幹線/名古屋~大阪市内  4,210円
JR線/幸田~名古屋       610円
近  鉄/鶴橋~山本       220円
飲食、その他昼食(ビール付き)         1,340円
夕軽食(ビール付き)        905円
缶ビール、コーヒー他         690円
交通費合計       10,240円
食費その他        2,935円
本日の総費用      13,175円


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